紀州釣り(ダンゴ釣り、バクダン釣り)という方法でチヌ(クロダイ)をねらいます。さしエサをヌカで作ったダンゴで包み、餌とり(雑魚)から守りながら、チヌ(クロダイ)の口元までエサを届けます。 ヌカがこませになって魚を集めつつ、さしエサを守るという画期的(?)な釣り方です。 また、チヌ(クロダイ)は、底にあるエサを食べると言われているので、底付近を釣る紀州釣りは、“一石三鳥”の釣り方と言えます。
<釣れる時期>
チヌは比較的温度差に鈍感な魚なので年中釣れますが、ベストシーズンは晩夏~晩秋です。
<釣れる場所>
チヌは汽水域でも塩分濃度の高い場所でも生きていけるので、「どこででも釣れる」と言っても言い過ぎではありません。 近場の波止で、ある程度魚影が濃く、海底が砂地か砂地まじりの岩礁帯であれば、釣れる可能性があります。 もちろん、磯場でもできます。ただ、紀州釣りはハリをいったん底まで沈めるので、あまりにも根掛かりがひどいような場所(底が荒い、海草が生い茂っているなど)では釣りができません。
<必要な道具>
- 釣り竿
紀州釣りはヌカを使いますので、手が汚れ、竿が汚れます。いい竿が汚れるのはイヤだという方は、リーズナブルな値段の磯竿を購入することをおすすめします。 もちろん、釣行後にきちんと洗えば汚れは落ちるので、他の釣りにも使えるような、ある程度良い竿を購入するのもおすすめです。 2万円~4万円ぐらいの竿が、値段的にも竿の質的にも良いのではないでしょうか。
※チヌ専用の竿もあります。0号~1号程度のものが主流で、柔よく剛を制すタイプの竿です。
- リール
やはり、竿と同様に、リールもヌカで汚れます。リールは精密機器なので、ヌカや砂が入ってしまうと故障にもつながります。 紀州釣り用の汚れて壊れてもいいリールを購入するのがいいでしょう。 しかし、最近は“ウォッシャブル(洗える)”リールが出ています。 ヌカや砂が入り込まないようにしながら洗えばきれいになります。 スプールには2号または1.75号か2.25号の道糸を巻いておきます。スプールが余るようなら下糸を巻いておきましょう。
- ウキ
紀州釣りでは、20~30cm程度のへらウキや棒ウキをメインに、寝ウキや自立ウキ(オモリがなくても立つウキ)、中通しウキ、玉ウキなどを使います。 ベテランになってくれば、その場の状況や波の様子に合わせてウキを使い分けることもありますが、自分の好みで選んでもだいじょうぶです。
- 玉網
大きな魚を掛けた時には、無理をして海面から引き抜くと、竿が折れたり糸が切れたりすることがあるので、玉網を使います。 5m程度の長さがあれば十分でしょう。(場所によっては5mでは届かない場合もあります。) タモ枠は40~45cm程度あればいいでしょう。
- バッカン
ヌカを入れておくために使います。 紀州釣りでは、たくさんのヌカを使いますので、最低でも36cmバッカンを持って行った方がいいでしょう。 また、途中で雨が降って来たときに、雨が入ってヌカが使えなくならないように、フタ付きのものがいいかもしれません。
- エサ(オキアミ、サシアミ、コーン、ボケジャコなど)
最もよく使われるのはオキアミです。しかし、エサとりが多く、オキアミがもたない時などは、缶詰のスイートコーンがおすすめです。 コーンで魚が釣れるのか?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、チヌは雑食性が強く、スイカやウィンナーでも釣れると言われています。 チヌほどいろいろなエサを使える魚はいないので、釣行の際はいろいろなエサを持って行って、試してみてはいかがでしょうか。
- ヌカ
米ヌカ7、砂2、押し麦0.5、粗挽きサナギ0.5程度の割合で混ぜ合わせ、海水を加えます。 場合によってはアミエビやオキアミ、集魚剤などを加えます。 紀州釣りにとって、ヌカは最も大切な部分で、ベテランの方々はそれぞれにこだわりをもってヌカ作りをしているようです。 ヌカに加える海水の量は、調整が難しく最初はなかなか上手くダンゴができないかもしれません。 目安として、ダンゴが海底に着底して、30秒程度で割れる(さしエサが出てくる)ぐらいの硬さがいいでしょう。 ヌカ作りが面倒に感じられる方は、釣具屋さんによって配合済みのヌカを置いている場合がありますので、確認してみてください。
- その他
オモリ(ガン玉、丸玉など)、シモリ玉、スナップ付きより戻し、より戻し、からまん棒、ウキ止め糸、1.5~2号程度のハリス、チヌ1~3号程度のハリ、プライヤー(ペンチ)、はさみ、フィッシングナイフ、クーラーボックス、スカリなど
<仕掛け>
紀州釣りでは、さしエサが海底付近を漂うようにウキ下を調整する必要があるので、移動ウキ仕掛けにします。 ウキ下の調整については下で説明するとして、ここでは、仕掛けについて説明します。
※からまん棒・・・ウキがハリスと絡むことを防止します。より戻しからウキの長さ分より少し上に取り付けます。
<ウキ下の調整>
ウキ下は、ウキ止め糸を上下させることで調整します。
浮かせ釣り・・・さしエサがダンゴから出ると、海底から15~30cm程度浮き上がるように調整します。 底に海草が生えている(と感じる)時や、根掛かりする時、波がある時などに使うといいでしょう。
底トントン・・・底にほぼちょうどさしエサがくるようにします。潮が流れていないときなどには、崩れたダンゴのすぐ近くにさしエサがあることになります。 エサとりが多いときには逆効果になることもあります。
這わせ釣り・・・潮の流れが速い時や風があってウキが流される時などには、浮かせやトントンではダンゴから勢いよくさしエサが飛び出してしまうので、ハリスを這わせる場合があります。ダンゴか割れたかまだかが判断しにくいこともあります。
<釣り方>
釣りではエサのさし方がとても重要だと言われています。オキアミでは、尾羽根を切り、そこからハリを通してできるだけ背中側にさします。 とにかく、魚がどのようにエサを食べるのかを考えながらハリをさすようにしましょう。 | さしエサをダンゴで包む際には、ハリに近い部分のハリスができるだけ直線になるように握りましょう。 そうしないと、ハリスにくせが付きます。 (ハリスを人差し指と中指で挟んで固定してから握ると良いでしょう。) | ダンゴを握る硬さは、その時のヌカのしまり具合や、海の様子により変えますが、ダンゴが着底してから30秒経つまでに割れるくらいがいいでしょう。 大きさはテニスボールぐらいです。まっすぐ沈むように、できるだけ丸く握りましょう。 |
人によっては、上手投げ、下手投げの得手不得手があると思います。どちらでも好きな方でダンゴを投げればいいです。 紀州釣りでは、「海底にヌカの山を築け」と言われます。できるだけ同じ場所に投げ込み、魚を寄せるポイントを決めていくということです。 遠投する場合は、しゃくを使うこともあります。 ダンゴを投げる時には、リールのベールを起こし、竿の長さより少し長めに道糸を出しておきます。 竿先に道糸が絡んでいると、竿が折れることがあるので注意しましょう。
底を切った(さしエサを底から浮かせた)場合の様子です。ダンゴからさしエサが出るとウキが浮き上がるので、どれくらいでダンゴが割れているかよくわかります。(ウキが浮き上がる途中で食ってくる場合が結構あります。)波がなくべたなぎの状況ではウキの様子がよくわかって釣りやすいのですが、多少波があるときには、そういうわけにはいきません。 ダンゴが割れたか割れていないか、アタリがあったのか無かったのか、などを判断するには、やはりある程度の慣れが必要になるでしょう。